「ほう、主題歌の作詞・作曲もお前がするのか?」「誰かが作ったものじゃ、ダメだろ?」「まぁそうだな…」 短編連続ドラマ…大変そうだけどちょっと興味がある。1回につき2分とかにしておこう。演技とか全くの素人だし。 とりあえず今日のところは女バージョンの撮影にしよう。 で思いっきり、低音で歌ってみよう。反応はどうなんだろう?「あ、女バージョンの時は女声で、男バージョンの時は男声で歌うのがベターだ。需要が大事だ」 との元祖『T』からのお言葉をいただいたので、姑息なことは考えずに、結局は男バージョンでマイクスタンドにピンスポットあててムード歌謡を歌いましょう。 そうだなぁ汗ばんでる演出。自らの顔と髪にスプレーで水をかける。 服は乱れてる感じ?乱れて覗くシャツの中鎖骨にはキスマークがしっかりと!ここら辺も汗ばんでください。スプレーカモン!で、キスマークはもちろんウォータープルーフの化粧品で作る。我ながらリアル過ぎてスゲーなと思う。 ピンスポットの熱気にも負けずに歌いました。暑かったです。 翌日の教室の反応を待ちましょう。 おやすみなさい! ******** 翌日、教室は遠くからでもわかるほどに盛り上がっていた。「やっぱり『K』様は男なのよ!昨日ほどマイクスタンドになりたいと思ったことはないわよ!」 普段の生活の中、マイクスタンドになりたいと思う事ないもんな。「胸に晒しを撒いたりなんかすれば、男性に化けることも可能だろ?」「そっちだって胸にパッド入れれば女性になれるわよ!」 胸で男女を判断してるのか?『K』は貧乳なんだが?「それにちゃんと見たの?あの手の動き!艶めかしくって!あの手がまた良かったわぁ」 恐れ入ります。「『K』様は手も美しいのねぇ」 お褒めにあずかり光栄です。ここにその手があるけど?マイクスタンド、ピンスポットで温まり過ぎ、熱くて火傷するかと思った。「なぁ、なんか『K』様が男か女かって論争ずっとしてねーか?もう、『この世は‘男・女・『K』様’で出来ている』って話に収束すればよくねー?」 おい、俺は新しい性別か?父さんもそんなことあったとか言ってたな。「「「「さんせー」」」」 マジかよ…。「はははっ懐かしいなぁ。コウジ君もクラスメートがそんなこと言いだしたか。コウジ君の父さんも昔は同じこと言われてたぞ。まぁ、
準備は整った。 俺だって裁縫は得意だ。血筋ってコワイね。あ、升田家は代々美脚フェチの血筋か…。 升田の親父さん、俺の脚を見て鼻血出してないよなぁ。 あと、ねーちゃんの旦那さんとか? ま、それはそれとして、撮影をしよう! 俺が思っている以上に大変な作業だった。 特に編集作業。 いつも出演だけで、編集作業は父さんがしてたからなぁ。 一人で全部は結構きついぞ? 母さんには、学校の成績を落とすな!って厳命されてるし、なかなか骨の折れる作業だ。 といってもいつかは完成するもので、完成しました! 100%コウジ作の『K』女バージョンの動画。 さっそく投稿! うわーっ、待ってましたとばかりに視聴者が!ちょっと怖いんですけど。でも苦労したカイがあるってもんだ。 夜もあとちょっとしかないけど、俺はそのちょっとで風呂と睡眠と…あと宿題もあったなぁ。をこなして翌日の教室の反応を見ることにした。 ****** 翌日の教室はまだ『K』が女なのか、男なのかを論争している。 もう2年も続いてるけど? どうしたらいいもんかなぁ?「昨日の動画見たか?うち太ももにキスマーク!色っぽいよなぁ?あのギリギリ感がなんともいえない」 まぁ、それが狙いだし。歌の感想は?「でも男かもしれないじゃん!」 …いや、だからね?歌の感想をだね…。「「「「「ちょっと、目障りな陰キャはどっか行って!」」」」」 俺が『K』その人なんだけどな。父さんもこんなだったって聞いたし、まあこんなもんか。 俺は静かな図書室に行くことにした。今後のことも考えたかったしな。 男の格好で女声で歌う…とか?逆も然り。 父さんの時みたいに『K』は二人いるとかなるんだろうか? 俺のプライドってものもあるけど、背に腹は代えられない!父さんのDVDを見て研究しよう。 うーん。参考にならないな。二番煎じとか言われると嫌だし。 ん?シェイクスピア? シェイクスピアのやつはやらないけど、一人芝居を短編でするのは面白そうだ。短編ドラマみたいな。 ドラマの主題歌については…俺が作るか。作詞・作曲『K』。で。どうだろう? こういうのって企画書の提出が必要なのか?ソニアにやりたいこと伝えたいんだけどなぁ。「俺を呼んだか?」 父さん?今までリンカばかりにくっついてたのに、いきなりなんだ? せっか
それから2年が経ち、俺は17才になった。父さん(49才?50才?)から放っておかれている。 その原因というのが、ねーちゃんが子供を産んだからだ。 父さんも母さんも初孫にメロメロ♡ 父さんなんかは孫の動画を撮りまくっている。 大成さんは一人前と認められたみたいで、あの店を親父さんと二人で切り盛りしている。ねーちゃんは書家をしている。 ‘書’というものはカロリー消費が激しいんだろうか? ねーちゃんの体形は子供を産む前と変わらないんじゃないかなぁ? 俺は、叔父となった。 17才なんだけどなっ。まあ、その原因は父さんと母さんにあるから何も言うまい。 子供は女の子。 升田の親父さんが「美脚に育て~」と何か念みたいのを脚に送っていた。怖い。まだ、ぷにぷにの脚なのに。美脚を発揮するのは10年は先だと思う。そうそう名前はリンカ。漢字は凛花らしいけど、「書くのが大変でしょう?」ってカタカナにしたらしい。 よほど『麗矢』が大変なんだろうなぁ。 俺は放っておかれている現状をいいことに自らソニアと連絡もとり、自分を自分でプロデュースするみたいな感じになった。つまり父さんは職場放棄になるのかなぁ?父さんの給与には影響しないみたいだけど、家での沽券にはかかわる事だと思う。 さて、17才になりキスマークも解禁となった俺は、そうだなぁ?懐かしのチャイナドレスでもう一度投稿してみようかな?キスマークアリで。今度は生足。 チャイナドレス、通常スリット入ってるの片側だけだけど、両側に加工しよう。ドーンとギリッギリまで見せてしまえ。…内ももにあるキスマークを見せたいのが理由なんだけど。 ハイヒール。生足だったら、靴擦れとか起こさないか心配だなぁ。まっ、それはなんとかなる!あと、キスマークの場所だけど。とりあえずは内ももだけにしようかな。「うわっ、私は気づかなかった」的な。そんじゃあそんな服着るなよって感じだけど。それはそれ。 曲はどうしよっかなぁ。煽情的な70年代の歌謡曲にしようかな?確かそのくらいの曲であったような気がする。昔、父さんが言ってた。 あんまり最近の曲にすると俺の動画が本家のPVに見えるらしいから、それはやめておこう。本家の方に申し訳ない。 俺はただの男子高校生でアーティストでもなんでもないのに、シンガーソングライターの方のPVよりそれっぽいとかネットで
その後サヤカは升田君と結婚することになった。 あ、サヤカと結婚する升田君の名前は大成というらしい。大仰な名前だ…。俺の脚で鼻血吹いて救急車で運ばれたのに……。 当たり前だが、俺は高校以来に変態の升田と顔を合わせることとなった。 俺は…コイツが握った寿司を美味いと言って食べていてことに自己嫌悪だというのに…。「お前…あの陰キャの‘田中タロウ’なのか?」「そうだけど?それについては事情が…。あぁ、お前も口外は絶対にしないように。書面で契約書でも書こうか?いや、口外したらうちの会社から鉄槌が下されるだろうな…」「なんだよ?」「大成君はもう知っているけど、『T』は俺だ。で、『S』がサヤカ。今はそこのコウジが『K』として活動をしている」「なんだ?美脚一家なのか?」 違うだろ?問題は口外するなという話だ!「この事は外部に完全に漏らさないように」「しっかしなぁ。あんなに色っぽかったお前の脚がこんなに筋肉質になってしまって…」 泣くか?男泣き?「サヤカさんは『S』としての活動よりも書家を目指すようで、叔父に弟子入りしていたな。叔父も脚フェチだからなぁ」 脚フェチ一家の方が凄いと思うが?「サヤカは書家になりたいんだ。親として応援するのは当然のこと!そこで大成君と気があったみたいだけどなっ」 俺としては不本意だ。「今はサヤカは書家としての活動を動画投稿しているにすぎない。顔バレOK、メディアOKの書家だ。で、なんで書家としての名前が『麗矢(れいや)』なんだ?」「爺さん曰く、サヤカさんの脚のイメージらしいです」 脚じゃなくて、全身のイメージで名前つけてくれよ…。「私はどうでもいいのよ。ただ……画数が多いなとは思うけど」 書家だもん。自分の工夫で崩しちゃっていいんじゃないかと思うけど、そういうわけにもいかないのか?難しい世界だ。 そういうわけで、なんだかねーちゃんはあっさりと嫁に行った。…とはいえ、ちょくちょく帰ってくる。っていうか会う。 仕事場があの家だから仕方ないだろう。 父さんは、ねーちゃんを撮りまくっている。 嫁に行く前よりなんか撮り過ぎじゃねー?ってくらい撮る。 ポニーテールで袴姿。デカい筆を巧みに操る姿にはなかなかコアなファンがついているそうだ。 新選組が好きだった人…とか? 確かにあのデカい筆でねーちゃんの書家として
そんなことで今日は女バージョンの撮影。しばらくは交互に撮影をして、男女が交互に投稿されるという事を視聴者に刷り込む。「こないだ女バージョンの撮影に乗り気になったみたいだったけど、なんかアイディアでもあるのか?」「バスタオルを巻いて湯煙の中歌う」 それは確かに色っぽい。しかし、うなじはどうだろう?「コウジ?お前のうなじはキレイなのか?」「は?」「湯煙の中と言えば、髪はアップにしたい。貧乳はまぁ、仕方ないとしても、うなじは重要ポイントだ」 コンピューター加工はできるが、やり込むと逆に暴かれる。 『K』が有名になると、そういう人が現れるんだよなぁ。「仕方ない。元気っ子が公園のブランコで立ち乗り。最後に片方の靴を投げ飛ばすってので行こう」 そして、なぜかある。家の中に公園。当然のようにあるブランコ。「衣装はホットパンツにしよう」「下着なのか?」「サヤカに聞きなさい笑われるぞ。いや、俺が言おうか?靴だがどこにでもあるスニーカー。後でコンピューターで編集してサイズもブランドもわからないように加工する」 曲は2000年代に流行った元気な曲にしよう。まだ『K』の知名度はそんなにないし、本家よりもPVっぽいとかはないだろう。……多分。「あ、上着は半そでパーカーにしよう。元気っ子っぽいだろう?」 ****** 翌日の教室は混乱を極めたとコウジは言っていた。「なんでよ?やっぱり『K』は女性なの?でも昨日は低音が出てた…」「見ろよ!『K』は女性なんだよ!色気と可愛らしさが同居する女性だよ!」「でも低音出てるから男性かもしれないじゃない?」「「「「うーん」」」」 そういう混乱こそ我が社(ソニア)が求めるものだってコウジには言ってるのになぁ。「サヤカー、コウジが昨日面白いこと言ったぞ。ホットパンツの事、下着だと思ったらしい」「可愛いもんじゃない?まだまだこれからどんどん父さんの要求は面倒になっていくんだから!」 心外だ。なんてことを言うんだ。「あ、そう言えば。母さんには先に行ったんだけど、今度彼が父さんに挨拶に来たいって!」 何奴だ?「俺のサヤカに手を出すとは不敵な…。何者だ?」「はははっ、父さん中二病?かなりヤバい人みたいだよ。えーと、升田君よ。師匠に出会わせてくれたしね。まぁ、そのあとも色々あって……」 色々ってなんだー!って
『K』は女性だと確定した状態だ。 この状態で思いっきり男性をアピールした動画を投稿する。 とはいえ、コウジもモヤシっ子。 頼みの綱は低音ボイスのみ!「俺、超すごくない?」 謎の自信をつけてコウジは言う。 まぁ、クラスが騒然で『K』の話ばっかりだったみたいだから仕方ないか。「今の状態はなぁ、「『K』は女性である。」だ。そうではなく、俺達スポンサーの会社が求めているのは、「えー?『K』って性別どっちなの?」だ。今の状態に甘んじることなく今日は男バージョンを撮影する!」「俺の女装に魅了されていたのに?」「男を魅了するのは女バージョン。女を魅了するのが男バージョンだ。今回、女生徒は魅了できていたのか?多分魅了していたのは男共だけだろう?よって、男バージョンも撮影する。全世界の人間が『K』に魅了されるんだ」 全世界って言いすぎたかな?でもなんかコウジはちょっとやる気みたいだし、いいかっ。「そういうわけでの男バージョンでの撮影だ。‘男らしさ’という逞しさは出せないからなぁ。あ、今後っていうか、『K』をしている間は体を鍛えるなよ!下手に筋肉がついたら女バージョンの撮影が不可能になるからな」 予め言っておかないとなぁ。俺が一人でやってた頃と違ってやることが多い気がする。 モヤシっ子だしなぁ。いきなり布団とかはマズいよな。 頑張って残業を片付けてきましたサラリーマンにしようか?本当に女装ならアイディアが出るのになぁ。 スーツとかリクルート系はあったよな?それを着崩してっと、髪型も普段はかっちりしてるよ。でも疲れて乱れちゃった。みたいな風にして。キスマークはまだ早いか?15才だしな。せめて17才くらいになったら解禁かな? 歌うのは、懐かしいなぁ。クラッシックの『魔王』にするか。 ドイツ語っぽいし、今日も耳コピして下さい。「頑張ったんだから、サービスしてくれ!って感じで、新妻に迫る感じで目線を俺にくれ。俺というか、カメラな」 ***** 翌日は教室の中が混乱していた。「えー?『K』って女性だと思ってた。あんな色気で迫ってきたら困る」「歌はなんだアレ。日本語でも英語でもなくねー?」「『K』は男なのか?一昨日は超色っぽい脚を披露してくれたじゃねーか!」 という状況を俺はコウジに聞いた。 コレコレ。懐かしいなぁ。女は『K』は男!って言い張り